JPモルガン・プライベートバンクが2日に発表した「2026年版グローバル・ファミリーオフィス・レポート」によると、調査対象となったファミリーオフィスの89%が暗号資産(仮想通貨)に全く投資していないことが明らかになった。
このレポートは、世界30カ国、平均純資産16億ドル(約2,480億円)の333のファミリーオフィスから得られた知見に基づいている。調査は2025年5月から7月にかけて実施された。
2025年、米国で新政権が発足し数々の政策転換が行われる中、世界のファミリーオフィスは「地政学リスク」に最も強い警戒感を示している。レポートによると、回答者の64%が最大の懸念事項の一つとして地政学を挙げ、そのうち20%が「全リスク中トップ」と回答。これは次点の流動性リスクや通商・関税政策(各12%)を圧倒する数字となっている。
また、インフレも依然として中心的な懸念事項で、約60%が主要リスクの一つとして挙げている。
しかし、このようなリスクに対する伝統的および新興のヘッジ手段への関心は限定的だ。仮想通貨の注目度が高まる中でも、89%のファミリーオフィスは投資を見送っており、ポートフォリオにおける仮想通貨の平均的なグローバル配分は0.4%にとどまる。
富裕層が仮想通貨投資に慎重な姿勢を崩さない背景には、この資産クラス特有のボラティリティの高さと、他資産との相関性が一貫していないことへの懸念があると考えられる。 レポートは、JPモルガン社内でも、ポートフォリオ内での仮想通貨の役割や適切な比率について慎重な議論が続いていると指摘した。
さらに、今回の調査から、約4分の3(72%)のファミリーオフィスは、安全資産の代表格である金(ゴールド)すら保有していないことが明らかになった。このことから、ファミリーオフィスは、実物資産や実績のある投資戦略を好む傾向が浮かび上がる。
仮想通貨や金への投資を避ける一方で、ファミリーオフィスの31%は資産の10%以上を現金で保有している。この高いキャッシュ比率は、ファミリーオフィスの投資に対する極めて慎重な姿勢を示唆しているとレポートは指摘した。
関連: ビットコイン先物売られ過ぎ、金・銀は買われ過ぎ=JPモルガン
世界のファミリーオフィスの65%が、現在または今後のAI投資を優先事項に挙げる一方で、実際のポートフォリオへの反映は遅れているのが現状だ。
実態として、半数以上は最も革新的な企業を生み出す可能性が高いグロース・エクイティやベンチャーキャピタルへの投資を見送っている。さらに、AIを支える不可欠な要素である電力・通信・物流などの物理的インフラに至っては、79%のファミリーオフィスがポートフォリオへの配分をゼロとしている。
この点について、JPモルガンのクリストフ・アバ氏(国際投資・アドバイス部門責任者)は、「AIの機会を最大化するには、大手企業だけでなく、半導体や電力、ネットワーク、冷却システムといったサプライチェーンを推進するイネーブラー(実現要因)に注目すべきだ」と指摘している。
また、AI大手10社の時価総額がすでに1.5兆ドルという巨額に達している現在、真の成長機会は未公開企業にあるため、プライベート市場への投資が不可欠だと同氏は付け加えた。
AI以外で、世界のファミリーオフィスが現在注目し、将来優先的に投資を考えている分野としては、ヘルスケアの革新(50%)とインフラ資産(41%)が上位を占める。
その他の分野では、サイバーセキュリティ(35%)や自動化・ロボット技術(33%)に関心が寄せられている一方で、仮想通貨投資についても17%のファミリーオフィスが視野に入れていると回答した。
関連: JPモルガン、2026年の仮想通貨流入は機関投資家主導で拡大と予測
ファミリーオフィスの平均的なポートフォリオは高い分散が図られている一方で、リスク資産への明確な選好が見られるとレポートは指摘している。投資の主流は、上場株式とオルタナティブ投資を組み合わせた運用であり、これらで全資産の約75%を占めている。
プライベート投資の内訳は、プライベート・エクイティ9.8%、不動産7.4%、コントロール志向型プライベート投資(経営への関与や意思決定権の確保を目的とする非公開投資)6.1%となっている。
これに、14.8%を占める債券を加えると、資産全体の84%がこれら三つの資産で構成される。
関連: モルガン・スタンレー、仮想通貨のポートフォリオ配分上限を最大4%と推奨