ウォーレン米議員ら、トランプ政権の仮想通貨特命官に対する倫理調査を開始
エリザベス・ウォーレン米上院議員を含む8人の民主党議員は17日、ホワイトハウスのAI・暗号資産(仮想通貨)担当特別顧問であるデービッド・サックス氏に書簡を送り、同氏の特別政府職員(SGE)としての勤務日数に関する詳細な報告を求めた。
ウォーレン議員らは、サックス氏がSGEとしての任期上限である130日を超過している可能性があるため、「新たな倫理上の問題を引き起こしている」と主張している。
サックス氏は著名なベンチャーキャピタリストで、PayPalの創業メンバーの1人。同社の最高運用責任者(COO)を務めた後、2017年に投資ファンド「Craft Ventures」(クラフト・ベンチャーズ)を共同創設し、仮想通貨分野にも幅広く投資している。
サックス氏はトランプ政権発足時からAI ・仮想通貨特別顧問として、同政権の仮想通貨政策を統率してきた。
同氏は、連邦政府が専門知識を持つ民間人を一時的に雇用するための制度である特別政府職員(SGE)という形で任命された。SGEは通常の公務員採用プロセスを簡略化し、重要な短期業務に活用されるが、連続365日間のうち最大130日しか勤務できないという規定がある。この制限は、SGEが「一時的」な役割であることを保証し、利益相反や長期的な私的利益の追求を防ぐためのものだ。
正規職員とは異なり、SGEは連邦政府での勤務期間中でも民間企業から報酬を受け取ることができるため、サックス氏は特別顧問の職務を全うしつつ、クラフト・ベンチャーズのゼネラルパートナーを兼任することが可能となっている。
しかし、ウォーレン議員らは、サックス氏が現職に就いた2025年1月20日から、営業日通りに勤務していた場合、7月25日が130日の期限となると指摘。書簡の日付時点では、現政権の167営業日となると強調し、倫理上の懸念が生じていると次のように述べた。
サックス氏の広報担当者は、同氏は130日の期限内に収まるようSGEとしての勤務日数を慎重に管理しており、連続で勤務はしていないと述べている。それは、ワシントンDCとシリコンバレーに滞在する週日を分けて過ごすことで行われたという。
また、ホワイトハウスは、SGEの制限日数に対しては、AI・仮想通貨特別顧問として勤務した日数のみをカウントしていると述べた。
しかし、ウォーレン議員らは、職務に就いた正確な日数は公表されていないと指摘。SGEの指定は倫理規則の適用に影響を与えるため、正確な日数のカウントが必要だとして、サックス氏に以下の報告を求めた。
ウォーレン議員は3月にも、サックス氏の職務における利益相反の可能性に対する懸念を表明した書簡を送付。その中でサックス氏に対し、政府倫理局に財務開示書類を提出したかどうか、役職を引き受けた後に何らかの案件から関与を回避したことがあるかどうか、そしてSGEとしてどれくらいの期間勤務する予定なのかを明らかにするよう求めた。
また、サックス氏が保有していたビットコイン、イーサリアム、ソラナを売却した正確な日付や、クラフト・ベンチャーズが仮想通貨運用会社「ビットワイズ・インベストメンツ」から資本を引き揚げた具体的な日付についても情報開示を求めた。
さらに、トランプ政権による仮想通貨準備金の発表について、サックス氏が事前にどの程度の情報を知っていたのか、そして政権がその準備金に含めるトークンをどのように選定したのか、といった内容についても情報開示を求めた。
その答えとして、3月5日付のホワイトハウスの文書の中で、サックス氏が特別顧問就任前に2億ドルを超える仮想通貨関連投資を売却していたことが明らかになった。
サックス氏の倫理開示によると、同氏とクラフト・ベンチャーズはすべての流動的な仮想通貨保有を売却し、「ビットワイズ10仮想通貨インデックスファンド」の直接保有ポジションも手放した。また、マルチコイン・キャピタルやブロックチェーン・キャピタルなど仮想通貨に特化した投資ファンドへの出資持分の清算も開始した。
サックス氏は人気ポッドキャスト「オール・イン」で、利益相反の疑いすら持たれないように、このような大規模な売却を行なったと語った。
ウォーレン議員は今年4月、上院にSGEの透明性と倫理要件を強化する特別政府職員倫理執行・改革法案(SEER法案)を提出した。この法案はSGEの定義を改正し、利益相反の防止や倫理ルールの強化を目的としている。
サックス氏の事例に当てはめると、倫理免除前の政府倫理局からの同意義務付けや、自身の投資に影響を与える仮想通貨やAI関連事業への関与の禁止、財務情報開示の公表の義務付けが当てはまる。さらにクラフト・ベンチャーズを規制または接触する機関・事務所とサックス氏が公式に連絡を取ることを制限するものでもあった。
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