Web3を伝えるという挑戦 メディア関係者が語る挑戦と期待|香港Web3 Festival2025
2025年4月、香港で開催された「Hong Kong Web3 Festival」では、ブロックチェーン技術の発展と実装を巡る議論が活発に行われた。CoinPostはアジアのWeb3情報流通を支える6名のメディア関係者に取材し、業界の課題と展望について聞いた。
取材に応じたのは以下の通り。
ゾロ氏(Zolo)ーーTechFlow(深潮)共同創業者
アンダーソン・シマ氏(Anderson Sima)ーーForesight執行主編
トントン・ビー氏(Tongtong Bee)ーーPANews共同創業者
ココ氏(Coco)ーーThe Block アジア太平洋地域統括ディレクター
ハンター氏(Hunter)ーーChainCatcherの共同創業者
マックスウェル・タン氏(Maxwell Tan)ーー金色財経のコンテンツディレクター
Web3メディアにおいて、もっとも繰り返し語られたのは「情報の取捨選択」の難しさだった。
金色財経のタン氏はこの課題を次のように説明する。
「Web3産業の発展は早く、さまざまなプロジェクトが次々と立ち上がっては消えていく。シグナルとノイズが入り混じるのが現状だ。その中で適切なバランスを取り、情報の信頼性を保つことが不可欠だ。」
PANewsのトントン氏も、「Web3には毎日のように新しいトレンドが登場するが、その多くは短命で、真に価値のある情報を見抜く力がメディアに求められている。ユーザーに向けた情報の“編集”がメディアの核心的価値になる」と述べた。
同時に、Web3メディアのビジネスモデルにおいて、中立的な情報発信と広告収益の両立には矛盾が生じることもある。この点について多くのメディア関係者は業界全体の課題であると口を揃える。
この点について、ChainCatcherのハンター氏は「報道と営業は明確に分かれている」と語った。同社では編集チームがコンテンツ制作を、営業チームがスポンサーやイベント対応を担当している。
記事内容に営業的な影響が及ぶことはなく、仮に利害関係が発生した場合でも「事前に取材対象に確認を取る」「事実に基づいたトーンにする」といったリスク管理が徹底されているという。
一方、米国発のメディア機関であるThe Blockのココ氏は、「ニュース報道と広告の明確な分離」が常に基本方針であると語った。ココ氏は、「読者にとって本当に価値のあるニュースとは何か。
その判断は広告主の意図に左右されるべきではない」と強調した。また、機関向けの評価・採用ニーズや個人の学習需要に応えるべく、教育型学習プラットフォーム「Campus」を立ち上げたことにも言及。これにより、収益の多様化も図っているという。
取材した6社のうち、ほぼすべてがAIをはじめとした技術を活用した情報処理や多言語対応を導入していた。
ChainCatcherのハンター氏は、「夜間や週末でも速報を出す必要があるため、AIで主要情報源を自動巡回し、緊急性の高い情報を抽出するシステムを導入している」と語った。これにより、少人数でも速報性と正確性を両立できているという。
PANewsでは、記事の翻訳だけでなく、AIによるポッドキャストの文字起こしやSNS投稿の整理も活用している。「読者層の多様化に対応するにはAIは不可欠で、現在は日本から15%、英語圏から20%のアクセスがあります」とトントン氏は語った。
金色財経のタン氏は、「記事の翻訳や動画・ポッドキャストの内容抽出などの分野で、ChatGPTやDeepSeekなどのAIを活用しており、コンテンツ制作の効率が大幅に向上している」と語った。
複数のメディア関係者がAIの活用を高く評価する一方で、The Blockのココ氏は「AIはあくまで補助ツールであり、最終的な価値判断は人間の目が必要」と強調。
さらに、「業界経験のある専門家が在籍しており、市場動向に関する独自の分析は現時点ではAIを上回っている」と語った。
将来の市場については、楽観的な展望を持つ関係者も多い。
Foresightのアンダーソン氏はその一人だ。Web3業界は「中長期的に見れば依然として成長産業だ」と明言する。現在の市場規模は約3兆米ドルに達すると推測されており、まだ成長の余地を多く残しているという。
NFTやDeFiといった過去のムーブメントを経て、現在は一時的な停滞期にあるが、「RWA(現実資産のトークン化、Real World Assets)」や「AI×Web3」など、次なる革新の兆しには期待が集まっている。
一方で、「現時点ではWeb3版iPhoneとも呼べるような革新的アプリケーションは出ておらず、業界としての真価が問われている時期だ」とも述べた。
金色財経のタン氏は、「ビットコインが国家戦略資産として保有される可能性がある。米国やアジアの金融緩和を背景に、マクロ環境は長期的に改善傾向にあるが、短期的な市場の予測は依然難しい」と述べた。
また、ChainCatcherのハンター氏は、「ビットコインは地政学リスクや金融不安の中で“デジタルゴールド”としての地位を強める一方、多くのWeb3プロジェクトは実用性や革新性に乏しく、淘汰の時期に入っている」と指摘した。
TechFlowのゾロ氏も同様の見解を示し、「ミーム系やAI関連など話題先行のプロジェクトは多いが、実態や将来性に乏しい。一方で、明確なユースケースとビジネスモデルを持つものが生き残る」と話した。
アジア市場の展望について、各メディアは地政学的背景や言語・文化圏の観点から多様な視点を示した。
The Blockのココ氏は、「アジアを捉える際は国単位ではなく“言語圏”で区切るべきだ」と指摘。
日本は安定した規制環境と強力なIPコンテンツ産業、韓国はゲームやアプリ分野での実装力が強み。シンガポールは制度整備と企業誘致で先行し、インドネシアは若年層とスマホ普及率の高さから将来的なユーザー基盤として期待されている。
Foresightのアンダーソン氏も「アジアには単一のリーダーはおらず、各国が独自のエコシステムを形成している」と述べた。
香港は柔軟な金融制度と国際性、韓国はアクティブユーザー、日本はIP資産と規制安定性、東南アジアは若年層主導の人口構成、中東では国家主導の導入が進むなど、地域ごとに多様な成長パターンが見られる。
「今後は多極的な成長が並行して進み、アジア全体がWeb3実装を牽引する可能性がある」とまとめた。
PANewsのトントン氏は香港について、「中国本土からの資金と人材が流入しやすく、英中バイリンガル環境と柔軟な制度のもと、アジアWeb3の中核になり得る」と評価。
また、TechFlowのゾロ氏は、東南アジアにおける中国語話者の多さと文化的親和性を背景に、「中国語圏メディアにとって注力すべき市場」としての可能性を示した。
Web3メディアは、信頼性の確保や収益構造、技術活用といった課題を抱えつつも、地域特性を活かした多様な成長の可能性を見せている。今後は実用性を伴うプロジェクトと地域独自のエコシステムが、社会実装をさらに後押ししていくだろう。
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