米動画配信大手Netflixは8日、仮想通貨取引所FTXの破綻劇を描くドラマシリーズ「アルトリスト(原題:The Altruists)」の予告編を公開した。全8話で、FTX創業者で元CEOのサム・バンクマン=フリード(SBF)氏と、姉妹企業アラメダ・リサーチの元CEOで恋人でもあったキャロライン・エリソン氏の関係を軸に、FTXの急成長から破綻に至るまでを追う。配信開始は11月19日を予定している。
SBF氏役はアンソニー・ボイル氏、エリソン氏役はジュリア・ガーナー氏が務める。「アルトリスト」は、効果的利他主義(effective altruism)を掲げた二人が、なぜ大規模な不正に手を染めたのかを人間関係を通じて描く。
予告編では二人が「毎回全額をかけることが数学的に最適な戦略」と語り合い、「良い目的のためなら嘘をついてもいい」と正当化する様子が描かれる。Netflixは二人を「極めて優秀で野心的な若き理想主義者」と位置づけ、「瞬く間に世界の金融システムを再構築しようと試み、最終的に80億ドル規模の詐欺を起こした『Z世代のボニーとクライド』」というストーリーに仕上げている。(ボニーとクライドとは、1930年代アメリカで銀行強盗を重ねて射殺された実在の男女カップル。映画『俺たちに明日はない』のモデルであり、野心的かつ破滅的な犯罪を犯す二人組の代名詞。)
脚本・クリエイターは『イミテーション・ゲーム』のグラハム・ムーア氏。制作にはオバマ元大統領夫妻が設立したHigher Ground Productionsが参加している。
FTXは2019年に設立され、SBF氏の下で急成長し、バイナンスに次ぐ仮想通貨取引所となった。SBF氏は仮想通貨業界を代表する起業家として注目を集め、2021年には米フォーブズ誌の「30歳未満の30人」(“30 UNDER 30”)に選ばれた。フォーブスはのちに、選考を後悔している人物を挙げる「恥の殿堂」リストの筆頭にSBF氏を加えている。
FTXは大手投資家から資金を集め、著名人を起用した広告で知名度を高めた。しかし2022年11月、アラメダ・リサーチの財務状況や、FTXが発行する仮想通貨FTTへの依存が問題視されると、顧客による出金要求が急増した。FTXは出金に応じられなくなり、同月11日に米国で連邦破産法第11章の適用を申請。SBF氏はCEOを辞任した。
破綻の核心は、顧客資産と企業資産の管理だった。米司法省によると、SBF氏はFTXの顧客資金を不正に流用し、アラメダの債務返済や投資、自身や幹部に関係する支出に充てていた。顧客資産は安全に管理され、アラメダも他の顧客と同じ扱いだと説明していたが、実際には顧客資金の流用を隠していたと認定された。
2023年11月、SBF氏は電信詐欺や共謀など7つの重罪で有罪判決を受け、2024年3月に懲役25年と約110億ドルの没収を言い渡された。エリソン氏は検察側に全面的に協力する司法取引に応じ、2022年12月に罪を認めた。SBF氏の公判では主要証人として証言している。
2023年秋の公判で、エリソン氏ら元幹部は「SBF氏の指示のもと顧客資金を流用し、不透明な決算書を作成した」と証言した。SBF氏が信奉していた効果的利他主義が、不正行為を正当化する理屈として使われていたことも明らかになった。
エリソン氏は、2024年9月に懲役2年を言い渡され、約14カ月服役して、2026年1月に出所した。SBF氏は現在も服役中だ。
SBF氏は2024年3月の有罪判決を不服として控訴したが、米第2巡回区連邦控訴裁判所は2026年6月12日、一審の有罪評決および懲役25年の判決を支持した。弁護団は9月10日、米連邦最高裁判所に上訴受理を求める申立て(certiorari petition)を提出。最高裁は9月15日に申立てを受理したが、実際に審理を行うかどうかの判断はまだ出ていない。
SBF氏は2026年6月、トランプ大統領に恩赦も申請した。これには強い反発が起き、米上院は7月15日、恩赦に反対する超党派の単純決議案を全会一致で採択した。決議に法的拘束力はなく、憲法が定める大統領の恩赦権を制限するものではない。それでも「SBF氏にいかなる恩赦も与えるべきではない」という上院全体の意思であり、政治的な牽制にはなる。
トランプ大統領自身も2026年1月、米ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、SBF氏に恩赦を与える考えはないと述べている。