ハードウェアウォレット大手のトレザー(Trezor)は日本時間10日未明、X(旧Twitter)で委託先のメール配信基盤が第三者に侵害されたと明らかにした。同社の正規ドメインを装い、「Critical Security Alert: STM32 Entropy Vulnerability」と題したフィッシングメールが出回っているとして、リンクを開かないよう注意を呼びかけた。
トレザーは「メールは弊社からのものではなく、フィッシングの試みだ」としたうえで、悪用されたドメインをすでに停止し、攻撃者がどのように正規ドメインへのアクセス権を得たのかを調査していると説明した。セキュリティ企業PeckShieldも同時刻、送信元アドレスが[email protected]を偽装している点を確認したとX上で報告している。
フィッシングメールは、同社製ハードウェアウォレットに搭載されるSTM32系マイコンチップに「ハードウェアレベルの重大な脆弱性」が見つかったとする内容だった。対象デバイスは全体の4分の1に及び、秘密鍵の生成に使われる乱数(エントロピー)が不十分になっていると偽って主張していた。
この乱数はウォレットの復元フレーズ(シードフレーズ)を生成する根幹技術で、脆弱だと資産流出に直結する。7月に発生したハードウェアウォレット「コールドカード(Coldcard)」のファームウェア不具合を悪用したビットコイン流出事件を連想させる文面で、受信者の不安を煽る狙いがあったとみられる。
同種のフィッシングは他社にも及んでいる。スイスのハードウェアウォレットメーカー、ビットボックス(BitBox)も同日、自社を騙る偽メールが出回っていると報告した。
ビットコイン管理サービスCasaの共同創業者兼CEO、ニック・ノイマン氏はX上で「マーケティングメール基盤が侵害された可能性が高い」と指摘し、被害がトレザーだけでなくビットボックスにも及んでいるとみられると付け加えた。
トレザーを巡っては8月にも、配送委託先ShipMonkの情報漏えいにより顧客8万689人分の個人情報が流出したと発表している(大半は氏名・電話番号・住所、うち1,947人は氏名・都市・メールアドレスのみ)。同社は今回のメール基盤侵害について、この配送データ漏えいとは別の事案だとしている。
同社は、STM32やエントロピーを名目とする不審なメール内のリンクを開かないこと、復元フレーズやパスコードをウェブサイトに入力しないことを呼びかけている。真偽を確認する際は公式サイトtrezor.ioか、認証済みの公式Xアカウントを参照するよう求めた。


