三菱UFJアセットマネジメントと三菱UFJモルガン・スタンレー証券、三菱UFJ信託銀行、Progmatの4社は3日、国内籍(日本の法令に基づいて設定・運用される)のトークン化投資信託について、実証実験を目的とするファンドを8月31日に設定したと発表した。
運用、受託、権利管理、システム運営という一連のプロセスを、実際の運用環境で動かしながら検証する。投資信託は設定して終わりではなく、基準価額の算定や追加設定・一部解約といった業務が続く。
検証の対象はトークンの発行にとどまらず、金融商品として継続的に運営できるかを実地で確かめる点に置かれる。
本ファンドの目的は組成・運営に関する実務的な知見の蓄積だ。受益権を機関投資家や個人投資家に募集・販売することはない。国内籍のトークン化投信としては本邦初としている(三菱UFJアセットマネジメント調べ)。
トークン化投資信託とは、投資信託の受益権(投資家がファンドの運用成果を受け取る権利)をブロックチェーン上で扱う仕組みを指す。受益権をトークンとして発行する形態のほか、権利の記録や管理をオンチェーンで行う形態も含む。海外ではトークン化されたマネー・マーケット・ファンド(MMF)の市場規模が拡大しており、デジタルアセット市場の中核的な商品の一つになっている。
本件では、投資信託受益権の権利を券面(紙の証券)に表示したうえで、誰が何口を持つかを記録する受益権原簿の管理をブロックチェーン上で実施する予定としている。今回はその第一段階として、原簿管理のオンチェーン化から着手する形だ。
4社は2025年12月4日、トークン化投資信託の商品化に向けた基盤整備で協業を始めると発表し、商品スキームの検討と法的整理、業務フローの構築を進めてきた。今回のファンド設定はその次の段階にあたる。
Progmatの齊藤達哉代表取締役のnoteによると、国内籍の投資信託をオンチェーン化するうえで論点になるのは、券面の扱いだ。投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)6条1項は、委託者指図型投資信託について、分割された受益権を受益証券をもって表示するよう定めている。
社債株式等振替法(社振法)の振替制度を利用する場合は、根拠法の定めにかかわらず紙の証券をなくす電子管理が可能になる。
一方、振替制度を使わない非振替の証券では、ペーパーレス化の可否は根拠法に委ねられる。会社法や信託法には券面を発行しない選択肢があるが、投信法にはこれを恒久的に認める規定がない。券面が発行された場合、トークンをウォレット間で移しても、それだけでは法的な権利移転は完結しない。
Progmatが事務局を務めるデジタルアセット共創コンソーシアム(DCC)の「トークン化株式・トークン化法WG」は2026年4月、「トークン化法に係る中間整理」を公表し、短期的な法整備として投信法6条の改正を提言している。
受益証券を発行しない選択を信託契約で可能にし、券面のない受益権について、譲渡の手続きや第三者に権利を主張するための要件(対抗要件)、原簿管理の規律を整えるという内容だ。
なお、権利をデータとして管理し直すという考え方は、国債でも共有されている。7月14日のWebX2026では、既発の日本国債をブロックチェーンで扱う取り組みについて、新しい資産を発行するのではなく権利移転の管理をオンチェーンで行うものだ、との整理が示された。振替制度の階層構造とどう整合させるかが、実装上の課題に挙がっている。
三菱UFJアセットマネジメントなど4社は本ファンドの設定以降も、検証の範囲を段階的に広げるとしている。対象に挙げるのは、外部投資家向けの提供拡大と、ステーブルコインや、銀行預金をブロックチェーン上で扱うトークン化預金との連携によるオンチェーン金融サービスの高度化だ。
制度整備と実運用の関係について、齊藤氏は「『実運用』と『制度整備』は、日本においても往復運動であるべきだと考えています」と記した。
本件の背景や法的な論点については、 同氏がnoteで詳しく解説している 。