仮想通貨運用大手グレースケール(Grayscale)のリサーチ責任者ザック・パンドル(Zach Pandl)氏は26日、ビットコイン(BTC)の相場動向に関する分析レポート「The Stack」を公表し、現在の下落局面が今後どちらに向かうかを決定づける2つのシナリオを提示した。
BTCは10月に記録した高値約12万5,000ドルから50%超下落し、6万ドルを割り込んで今サイクルの最安値を更新している。
パンドル氏は下落の主因として「価値毀損(デベースメント)取引の巻き戻し」を挙げた。昨年末の時点では予測市場が比較的ハト派寄りのケビン・ハセット氏が連邦準備制度理事会(FRB)議長に指名されると見込んでいたが、実際にはよりタカ派のケビン・ウォーシュ氏が就任した。
インフレの根強さを背景に、市場はFRBが今年中に利下げではなく利上げに踏み切ると予想し始めている。法定通貨の代替資産として競合するスポット金も高値から約25%下落しており、ボラティリティを調整するとBTCの下落幅と同水準だとパンドル氏は指摘する。
FRB政策期待の転換に加え、パンドル氏は仮想通貨市場が追加的な3つの逆風に直面していると分析した。クラリティー法(CLARITY Act)の上院通過をめぐる不確実性、ストラテジー(Strategy)の高レバレッジなバランスシートへの圧力、そして量子コンピュータがもたらすリスクへの懸念だ。
グレースケールがベースケースと位置づける楽観シナリオでは、クラリティー法が上院を通過し、ストラテジーが財務基盤を安定させ、FRBが利上げを見送るという3条件が揃う。この場合、BTCはすでに底打ちに近い水準にある可能性が高いとパンドル氏は述べた。
一方の悲観シナリオでは、クラリティー法が今年中に成立せず、ストラテジーをはじめとするデジタル資産財務会社がさらにデレバレッジを進め、インフレの持続がFRBに利上げを促す展開を想定する。この場合、BTCは現水準から緩やかにさらに下落するとみている。
ただし過去のサイクルで記録した高値からの80%規模の下落が再現する可能性は低いと明言した。今サイクルは強気相場そのものが従来より抑制されており、機関投資家の需要が下値を支えるためだとグレースケールは説明する。
同社は足元の下落局面を「中長期の投資家にとって、パブリックブロックチェーン技術とデジタル資産の構造的成長に向けてポジションを構築する好機」と位置づけた。
パンドル氏は規制環境の改善が機関投資家の参入を促しているとして、米国で初めて規制当局の承認を受けた永久先物の上場、ステーブルコインの普及、現実資産(RWA)のトークン化拡大を構造的な追い風として挙げた。
政府債務の膨張、金融仲介機関への信頼低下、AIの台頭といった長期トレンドも仮想通貨資産クラスを後押しする要因だと補足している。
グレースケールは「仮想通貨は過去10年で最もパフォーマンスの高い資産クラスだった。次の10年も同様だと考えている」と結論づけ、中長期の強気姿勢を改めて強調した。