米ホワイトハウス予算管理局(OMB)が、アンソロピック(Anthropic)社の極めて強力な次世代AIモデル「Mythos(ミトス)」を、連邦政府の主要機関に提供するための準備を進めていることが17日に明らかとなった。
ブルームバーグが入手した内部文書によれば、OMBのグレゴリー・バルバッチャ連邦最高情報責任者(CIO)は、主要各省庁に対し、Mythosを安全に利用するため保護措置の構築を開始したことを通知したという。
今回の導入調整は、財務省、国防総省、商務省、司法省、国務省といった国家の中枢を担う省庁を対象としており、数週間以内により詳細な情報が提供される見通しだ。
ホワイトハウスが主導してアクセス環境を整備する狙いは、Mythosが持つ卓越した脆弱性検知能力を政府自らが活用することで、あらかじめ潜在的なサイバー攻撃者に対して先制的な防御体制を構築することにある。
アンソロピック側は、Mythosがハッカーによって軍事転用され、データの窃取やネットワーク妨害に悪用されるリスクを懸念し、これまで提供先を極めて限定的な技術・金融大手企業に絞り込んできた。同社は米国家安全保障担当の幹部に対し、Mythosの攻撃的・防御的な能力の全容を事前にブリーフィングしており、今回の政府展開に向けてもガードレール(安全策)の構築で緊密に協力しているという。
特に注目すべきは、今回の動きがアンソロピック社とトランプ政権閣僚との間の深刻な対立のさなかで行われている点である。
ピート・ヘグセス国防長官率いる国防総省は、同社製品を「サプライチェーン・リスク」に指定して排除を試みているが、ホワイトハウス側はこうした省庁間の壁を事実上乗り越え、独自の判断で高度AI技術の全政府的な活用を優先した形だ。
政府関係者の間では、Mythosのような強力なAIを個人のハッカーが手に入れることは、従来の兵士が「特殊部隊のオペレーター」に変貌するほどの劇的な変化をもたらしうると危惧されている。そのため、政府が自らのソフトウェアの欠陥を攻撃者に先んじて特定するためには、法的・官僚的な対立を保留してでも最先端のAIツールを導入せざるを得ない状況だ。
こうしたMythosの脅威は仮想通貨業界にも波及しており、特に複雑なスマートコントラクトの脆弱性を瞬時に特定し悪用する能力への警戒感が強まっている。仮に人間の監査で見落とされていたバグが同AIによって白日の下にさらされれば、大規模なハッキング事件を誘発しかねないとして、多くの専門家が警鐘を鳴らしている。
ホワイトハウスのバルバッチャCIOは、各省庁に提供するモデルが適切な安全策を講じた「修正版」となることを示唆しており、民間インテリジェンス・コミュニティとも連携してリスク管理を徹底する構えだ。
今回のMythos導入の動きは、AI時代における国家のサイバー戦略が新たなフェーズに突入したことを象徴するものだ。高度な攻撃能力を持つAIを、いかにして国家の防御力へと効率的に変換できるかという試みは、今後の伝統金融・デジタル資産システムや、政府インフラ全体の堅牢性を左右する極めて重要なターニングポイントとなる。


