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【2026年度】仮想通貨(暗号資産)の最新税制要望から読み解く今後の法改正シナリオ|Aerial Partners寄稿

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近年、事業者向けの規制整備や市場インフラの改善が進んできた一方で、税制の扱いは依然として「雑所得(総合課税)」が基本であり、所得税の累進により高い負担が発生する仕組みが続いています。

日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が2025年7月30日に要望書を提出し、金融庁も2025年8月29日に税制見直しの方針を示す文書を公表しました。
今回は最新の内容を踏まえ、複数の改革シナリオを整理して将来の制度像を考察してみましょう。

JVCEAは実務面の利便性向上と課税上の公平性の確保を柱に、税制区分の見直しや損失繰越の導入、交換時課税の在り方などを具体的に要望しています。

2025年7月30日に提出された要望書では、申告分離課税の導入や損益通算の適用、交換時課税の繰延べなど、納税者・事業者双方の実務負担を軽減する観点が強く打ち出されています。

一方で2025年8月29日に金融庁が提出した要望は、税制の急激な変更が報告義務や申告実務に与える影響を慎重に検討すべきとの立場を示しています。
金融庁の姿勢は、制度の透明性・安定性を重視しつつ、まずは報告・会計上の運用改善を図ることを優先し、税制そのものの大幅な見直しは段階的に進めるべきだ、という方向性です。

要するに、JVCEAは利用者視点からの利便性改革として「利用・実務面の改善」を求める立場を取り、金融庁は「行政運用と整合性の確保」を重視しているため、優先する課題や導入の速度感に違いがある状況となっています。

昨今では仮想通貨を金融商品として取り扱う可能性や、ETFの実現に向けた動きなどが見られています。
制度が改正されることで、日本国内でも実現されるものが出てくると思われますが、それぞれ考えられるシナリオを見ていきましょう。

第一のシナリオとして、ETF(上場投資信託)等の制度的枠組み整備や取引インフラの向上に関する改正が進み、税制の抜本変更は後回しにされるケースです。
この場合、仮想通貨ETFによる所得にかかる税金は総合課税または申告分離課税を選べるようになる可能性があると思われます。

ETFを通じた仮想通貨取引が普及すると、取引履歴の管理や価格情報の一元化が進み、会計・申告上の実務負担が軽減される利点があります。
現物取引については引き続き総合課税が維持される可能性があるものの、ETFに関する取引には申告分離課税も適用できるようになり、申告方法の標準化や証券会社経由の取扱い明確化などから、申告ミスや過誤のリスクを下げられるようになります。

このシナリオは導入障壁が比較的低く、行政側の同意も得やすいため実現可能性が高い一方で、現物取引に関しては税制の変化がなく、そちらへの影響はないという状況が続くことも考えられます。
そして、制度環境の整備が先行することで、将来的な税制変更のためのデータや運用ノウハウが蓄積される利点もあります。

また、ETF等の導入により、税務ソフトや申告支援サービスが提供する計算自動化機能の適用範囲が広がり、利用者に対するサポートも効率化されるでしょう。

ただ、先にも述べた通り現物取引についてはこれまで通りの総合課税が続くため、現在現物を保有している人・ETF導入後も現物取引を続けている人にとって、不便な状況は続くこととなってしまいます。

次に仮想通貨取引を申告分離課税に移行し、株式などと同様の分離課税率(例:約20%台)を適用するといったシナリオを考えてみましょう。
このシナリオが実現すると、総合課税により高税率が適用されていたケースでは実効的な税負担が下がる一方、低所得帯などでは現行の総合課税の方が有利な場合があるため、高税率が適用されていたケースでは税負担が軽減し、メリットが大きくなります。

実務的には、分離課税導入は段階的に適用対象を限定する形で進む可能性が高いです。
例えば、国内登録事業者を通じた現物取引のみを第一段階で対象とし、海外取引やステーキング報酬など複雑な取引は別枠で整理する、といった運用です。

税務面では、分離課税導入により個人の所得計算が簡単になっていくと思われます。
ただし、損益通算の範囲や交換時課税の取り扱いなど、詳細なルールは制度設計上の課題として残っています。
たとえば、国内取引所経由の取引は分離課税、海外取引やレンディング収益は総合課税、といった二段階ルールが導入される可能性も考えられるため、設計次第で実務上の影響は大きく変わるでしょう。

最後に、仮想通貨の税制・会計上の位置づけをより広く再定義し、株式等と同等の扱いに近づけるすべての改正要望が通った場合のシナリオです。
ここでは分離課税の恒久化に加えて、損益通算の拡大、配当性の取り扱い、法人間取引の明確化、さらには金融商品取引法に準じた開示や取引監視の仕組みが検討される可能性があります。

このシナリオは制度としての整合性は高まるものの、法体系の大幅な改編や下位規則の整備が必要となるため、議論と準備に時間がかかります。
また、NFT・ステーブルコイン・レンディング収益等、多様なトークン性質をどう分類するかという課題も残っています。

税務面においては、申告手続きの前提ルールが統一され、計算や帳簿整理が容易になるというメリットが考えられます。
しかし、法制度が複雑になったことで、システム開発や税務計算アルゴリズムの更新、顧客サポート体制の拡充など、企業側は対応に多大なコストがかかる可能性があるでしょう。

JVCEAの主要要望がほぼすべて採用され、かつ金融庁の税制・報告制度に関する方針も反映される場合、シナリオ3の「株式等と同等の包括的な扱い」に近づくことになります。

それぞれの要望をまとめると、次のものになります。

結果として、納税者にとってはどのように申告・納税すればよいかをあらかじめ判断しやすくなりますが、一方で制度の複雑化により、導入時には運用上の調整やサポート体制の拡充が不可欠となります。

すべての要望が通ることは難しいと思われますが、JVCEAと金融庁双方の要望が組み合わさることで、制度整備と税務運用の両面でバランスの取れた改正が実現する可能性はあると考えられます。

現実的には、まずは取引・報告・会計上の環境整備が進み、その中で段階的に税制の見直しが検討される可能性が高いです。
大規模な改正は制度的な整合性を高める一方で、導入コストや議論期間が大きくなるため、複数段階に分けて実施されることが予想されます。

現時点で納税者や事業者が行っておくべき準備としては、取引履歴の整備・保存、会計処理基準の確認、税務相談窓口の確保、制度変更の動向把握が挙げられます。
特に取引履歴は海外取引所やウォレット間移動を含めて可能な限り保存しておくことが、将来の申告や税務調査対応で役立ちます。

また、制度変更の方向性が明確になった段階で、税理士や会計士と具体的な対応方針を相談することが望ましいでしょう。

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