DeFiが抱える最大の課題は? トークン化時代見据えソラナ財団らが議論|WebX2025
大型Web3カンファレンス「WebX」では25日、「DeFiエコシステムにおけるスケーラビリティ、プライバシー、成長への展望」をテーマとしたパネルセッションが開催された。DeFiエコシステムを代表するパネリストが、DeFiの課題や新たな潮流を議論している。
「WebX」は国内最大手のWeb3メディア「CoinPost」を運営する株式会社CoinPostが企画し、一般社団法人WebX実行委員会が主催するWeb3カンファレンスで、今年は8月25日と26日に「ザ・プリンスパークタワー東京」で開催されている。
HELLO Labsのモーリス・シャブジー・M・アンドリューWeb3責任者が司会を務め、以下の四人がパネリストを務めた。
まず司会のアンドリュー氏は「現在、DeFiと暗号資産(仮想通貨)の最も困難な課題とは?」とパネリストに質問を投げかけた。
エスプレッソ・システムズのルー氏は、DeFiは信頼の最小化、つまり自己管理や、中央集権的な第三者を信頼することなく資産を保有できることを望むものであり、一方で、中央集権型金融の側で最も重要なのはパフォーマンスだと話す。
そして、DeFiの最大の課題の一つは、DeFiの性質を保ちつつ、どのように中央集権型金融のようなパフォーマンスを得るかだと続ける。その上で、ロールアップはそれを実現しようとしていると述べた。
ロールアップは、一般的に多数のトランザクションをまとめてバッチ処理するスケーリングソリューションのことだ。エスプレッソ・システムズも、ロールアップのセキュリティを改善するベースレイヤーの作成に取り組んでいると語る。
ソラナ財団のバグリオニ氏は、DeFiはまだ新興分野であり、ソラナのエコシステムでは、個人投資家によるミームコインブームや、機関投資家による現実資産(RWA)トークン、ステーブルコインなど様々なレイヤーが見られたと述べる。
こうしたレイヤーが複雑に交錯する中で、どのように全体を管理し、「まだ進行中の作業であることを説明しながら、どうやって皆を満足させるか」が課題だとコメントした。
HyperXのジェイソン氏は、大きな課題は標準化だと話した。異なるプラットフォームが資産を異なる方法でトークン化しており、共通のフォーマットがないと指摘する。
オラクルとデータフィードも課題だと続けた。オフチェーン資産の価値がオンチェーンに正しく反映されていることをどう確認するか。これが、RWAトークン化において最も困難な点だと意見する。
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BNBチェーンのサラ氏は、現時点ではやはり流動性の分断が課題だと話す。現在、どのチェーンも大量のTVL(預かり資産総額)を抱えており、それぞれが資産をそのプロジェクトのチェーンでローンチさせることで競争していると指摘した。
異なるチェーン間の流動性を橋渡しするためのソリューションであるクロスチェーン・ブリッジなどもあるものの、安全性が充分ではないとの見解を示す。
もう一つの課題は、将来的にあらゆるものをオンチェーンでトークン化できるようになり取引できるようになった際、そのボリュームに対応できるだけの高いパフォーマンスを持つチェーンが今は存在していないことだと語る。
セッションでは、大企業によるL1チェーン構築についても話が向けられた。
司会のアンドリュー氏は、「ソニーやロビンフッドのような伝統的な企業が独自のブロックチェーンを作るのは良いアイデアだろうか」と疑問を投げかけている。資金力の大きな企業が参入すれば、多くの仮想通貨企業を凌駕してしまうのではないかとの懸念も示した。
これに対して、サラ氏とアンドレア氏は、独自のブロックチェーンを一から立ち上げるのは資金力があっても容易なことではないとの意見で同意している。
コミュニティのビルダーや、クロスチェーンブリッジ、データインデックス、オラクルの確保など、核となる事業ではないすべてのことに対処するのは困難だろうと意見する格好だ。
一方ルー氏は、「誰もが汎用チェーンを構築する」というアイデアが良いとは思わないが、あるアプリに特化したチェーンを構築するメリットはあると主張した。
例えば、ロビンフッドは同社プラットフォーム上の取引のために、イーサリアムのL2であるアービトラム(ARB)のブロックチェーンを採用したが、将来的には独自のL2ブロックチェーンをローンチする予定だ。ルー氏は、これによりシーケンサーにより取引順序を制御したり、そのチェーン上のアドレスとアカウントが、検証済みのロビンフッド・ユーザーに結びついていることを確認できると指摘した。
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登壇者は、それぞれのプロジェクトの今後の取り組みについて話した。
ソラナ財団のアンドレア氏は、FiredancerとAlpenglowが、ソラナネットワークの速度効率を劇的に向上させるはずだとコメント。また、企業がビジネスを改善するためにパブリックブロックチェーンをどのように利用できるか考え始めていることにも注目したいとしている。
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エスプレッソ・システムズのルー氏は、同プロジェクトが数か月後にプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へとアップグレードする予定だと話した。また、Cartesiなど多くのチェーンがエスプレッソの導入を進めていると述べる。
ジェイソン氏は、HyperXは完全に分散化されたオンチェーンの無期限取引プラットフォームを構築しており、すでに15のチェーンで稼働していると述べる。今後の拡大も示唆した。
サラ氏は、今後半年間のBNBチェーンの計画を話した。一つはステーブルコインやRWAトークンのオンボーディングを推進していきたいと意欲を示している。
次に、AI(人工知能)も、間違いなく進めていきたい分野であり、特にAIエージェントとオンチェーン決済に関連する開発者やプロジェクトをサポートする見込みだと述べる。さらに、2026年に新たな高性能チェーンを立ち上げることを目指しているとも明かした。
WebXとは、日本最大の暗号資産・Web3専門メディア「CoinPost(コインポスト)」が主催・運営する、アジア最大級のWeb3・ブロックチェーンの国際カンファレンスです。
このイベントは、暗号資産、ブロックチェーン、NFT、AI、DeFi、ゲーム、メタバースなどのWeb3関連プロジェクトや企業が集結。起業家・投資家・開発者・政府関係者・メディアなどが一堂に会し、次世代インターネットの最新動向について情報交換・ネットワーキングを行うイベントです。
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