Oasys × SBI VC Tradeトップ対談 NFTからトークンへの戦略シフト、その背景は?
Web3業界の最先端で、NFT(非代替性トークン)からトークンへの戦略シフトが鮮明になってきた。1万個限定のNFTでは広がりに限界があった一方、日本の規制環境下では100万個までのトークン発行が可能だ。この特徴を活かし、地域創生やファンコミュニティなど、実体経済との接点を持った新たな価値創造に注目が集まっている。
Web2からWeb3への移行においても、トークンを中心に据えた新しいアプローチが、より本質的な解決策として期待される中、この新戦略について、 Oasys とSBI VC Tradeのトップが語り合った。
SBIホールディングスの北尾会長は昨年8月、WebX 2024にて、Oasysとの戦略的業務提携を発表。OasysがSBIから資金調達を実施した上、SBIグループのあらゆるリソースを活用し、OASトークンの流動性向上やエコシステムの強化に取り組んでいくことを表明している。
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松原: Web2にWeb3を足すアプローチでは、既存ゲームにブロックチェーン要素を追加する試みを続けてきました。集大成として大手ゲーム会社であるSEGAからライセンスアウトされてdouble jump.tokyoが開発する「魁 三国志大戦」のリリースを控える中、このアプローチをしっかりサポートしていきます。(※記事公開時リリース済み)
松原: トップが果敢にイニシアチブを取り、積極的に進めている企業は新しいアプローチにも前向きです。ただし、上場企業として法律や会計、税制面で難しい部分もあるため、トップのコミットメントが重要になります。下からの提案だけでは実現が難しい領域です。
松原: NFTの最大の課題は、“10,000個”限定という業界標準の制約がコミュニティの拡大を制限してしまいかねないことです。一方、トークンであれば、日本の規制環境下でも100万個までの発行が可能で、より大きな流動性と拡張性を実現できます。特に地域創生やファンコミュニティの形成において、トークンは大きな可能性を秘めています。
かつてNFTで人気を集めたプロジェクト、例えばAzukiやPudgy Penguinsなどが、現在トークンの方向にシフトしているのは注目すべき動きです。
松原: 観光地での活用を例に挙げると、一定数のトークンを保有している人への割引特典や、地域の特別なサービスへのアクセス権の付与などが考えられます。かつてNFTブームの時に実現したかったことを、より流動性が高く、スケーラブルな形で実現できるのがトークンの強みです。
トークンを中心とした新しいアプローチにより、Web3の本質的な価値を実現していきたいと考えています。特に日本では、規制環境が整備されていることを活かし、実用的なユースケースの創出に注力します。エンタープライズ向けソリューションの開発や、コミュニティ活性化の取り組みを通じて、Web3の新たな可能性を追求していきます。
松原: チャレンジした結果としてWeb2のユーザーを取り込んだことで、一般の方がWeb3的な体験(ゲームアイテムの交換や売買)に触れるとエンゲージメントが数倍に伸びたことなど、新たに得られた発見もあります。
しかし、リッチ化していくゲームマーケット真正面からのチャレンジは非常に難易度が高く、その間にマーケット環境も大きく変化します。
マーケットを追っていく中で、最近は、トークンを中心に据えた新しいアプローチこそが、“Web3の本質”なのではないかと考えるようになりました。Oasysとしては、引き続きWeb2からの転換のようなチャレンジに取り組みつつも、トークンファーストな「あそび」にも力を入れていきます。
松原: ゲーム開発には時間がかかるため、どうしてもベアマーケット(弱気相場)の影響を受けやすい面がありました。
ただ、2024年1月の米SEC(証券取引委員会)によるビットコインETFの承認以降、市場は回復基調に入り、我々も新しいゲームや提携の発表を行うことができました。現在は、ゲームの実需と投機的な需要のバランスを取りながら、持続的な成長を目指しています。
松原: 大きな流動性をもつ海外取引所への上場も視野に入れています。国内では、一般投資家のアクセシビリティを高めるため、規制に準拠した形での取り扱い拡大を進めていきます。
また、グローバルな取引の動向を見ると、取引がオンチェーンの方向に移行している傾向が顕著です。これは取引所の中身がブラックボックス化することへの不安が高まっているためです。我々も、従来の中央集権型取引所での取り扱いに加えて、オンチェーンでの流動性確保にも注力していく必要があります。
取引所を巡る環境は大きく変化しています。
松原: 近藤:
国内の取引所との連携は着実に進展していますね。これは一般投資家へのアクセシビリティを高める重要な一歩です。理想を言えば、コンビニで購入できるくらい身近な存在になることが目標です。ただし、トラベルルールなど規制対応の面で課題もあり、段階的な展開が必要になります。
近藤: 日本の投資家の購買力は決して弱くありません。例えば、過去のIEOでは、グローバルな取引所を上回る資金調達実績もあります。ただし、現状では商品数が限られており、需給のミスマッチが起きています。今後、適切な規制の下で、より多くの商品を提供していくことで、市場の活性化が期待できます。
松原: 日本の規制環境は、大きなアドバンテージになり得ます。100万個までのトークン発行が可能で、NFTと同様の扱いができる環境は、実は稀有な存在です。この環境を活かし、地域創生やファンコミュニティなど、日本ならではの価値創造を進めていきたいと考えています。SBIグループとの協業も、この文脈で非常に重要な意味を持っています。
我々には3つの期待があります。
一つは金融機関としての側面で、トークンプロジェクトを一緒に促進していくこと。二つ目は投資家としての役割で、AIなど新しい分野への投資。そして三つ目は、北尾氏が言う『金融を超える』という視点での協業です。例えばeスポーツやサウジアラビアとの提携など、グローバルで金融を超えた取り組みができればと考えています。
小田: 日本のユースケースを世界にアピールできる絶好の機会だと捉えています。海外がトークンの投機的な側面に注目する中、日本は着実にユースケース構築を進めてきました。この真摯な取り組みと、トークンを活用した実用的なプロジェクトを、グローバルに発信していきたいと考えています。
松原: Web3の世界は、単なる投機の場ではありません。実体経済との接点を持ち、具体的な価値を生み出していくことが重要です。日本独自の規制環境と、真摯なユースケース構築の取り組みを活かし、グローバルに通用する新しい価値を創造していきたいと考えています。
トークンエコノミーを軸とした新戦略は、これまでのWeb3への取り組みの経験と反省を踏まえた、より実践的なアプローチといえる。特に日本の規制環境を強みとして活かす視点は、グローバル展開においても重要な差別化要因となりそうだ。
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