ビットコイン開発で激論 データ量制限の撤廃提案めぐり
仮想通貨ビットコイン( BTC )のデータ保存に対する制限を撤廃する提案をめぐって、開発者の間で激しい議論が巻き起こっている。
ビットコインのメインネットは送金などシンプルな機能に集中すべきか、データ保存など追加機能も公式に提供すべきかという観点も含まれるものだ。
問題となっているのはコア開発者ピーター・トッド氏による「OP_RETURN制限の撤廃」という提案だ。承認された場合、テキストや画像など、今よりもはるかに大量のデータをビットコインブロックチェーンに直接保存できるようになる。
OP_RETURNは、ビットコインスクリプトにおいて出力に任意のデータを埋め込むための命令だ。
現在、これにより埋め込めるデータサイズは最大80バイトである。短いメッセージに十分なサイズだが、制限を撤廃することでNFT(非代替性トークン)やオンチェーンアート、証明情報などをもっと自由に記録することが可能とされる。
ピーター・トッド氏は、既に技術的な回避策によって、こうしたデータ制限を迂回している人々がいると指摘した。
提案に対して、特にコア開発者のジェイソン・ヒューズ氏は、反対意見を鮮明にしている。「ビットコインを価値のないアルトコインに変えてしまう変更」であり、「単なる小さな技術的変更」をはるかに超え、ビットコインネットワークの本質そのものを根本的に変えてしまうと批判した。
提案は、ビットコインネットワークを価値の保存手段や分散型通貨として進化させるのではなく、任意の「データストレージシステム」に変えてしまうと懸念する格好だ。ハードフォークをする場合と同様に、厳密な検証が必要だと述べる。
反対派の一部は、ビットコインは送金と残高記録という基本機能に集中すべきであるというミニマリズムの思想も掲げている模様だ。
一方で、同じくコア開発者のピーター・ウィール氏は、次のようにコメントした。
ビットコインネットワークがデータ保存手段として使われることには抵抗があるものの、そうしたことに一定の需要があることを認めて妥協する格好だ。
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開発者らは、現在すでにスクリプト領域に自由にデータを格納できるようにするTaproot機能により、ビットコイン版NFTとも呼ばれる「オーディナル(Ordinals)」や、それを応用するBRC-20トークンなどが実現していることを前提として話している。
こうした技術により、ユーザーはすでにビットコインネットワークにデータを記録することが可能になっている状況だ。ただ、こうしたトークンの取引がネットワークに負荷を与え、取引手数料が上昇することなどが問題となってきた。
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「OP_RETURN制限の撤廃」に賛成する開発者らは、Taproot機能のwitness領域が本来の用途とは別のデータ保存に使われることを問題視。制限を撤廃することで、データの刻印がより健全な形式で行えるようになると見ている。
一方で反対派は、制限をなくせば、任意データ(画像、動画など)を大量に書き込むスパムが加速するリスクや、フルノード運営コストが増大して中央集権化を招くリスクを懸念しているところだ。
ヒューズ氏は、データ保存を目的とするユーザーはすでに低コストのオーディナルを利用していると指摘。OP_RETURNで埋め込むデータ制限を撤廃したところで、そちらの方がコストがかかるため使うインセンティブがなく、無意味なのではないかとも主張した。
議論はまだ決着しておらず、ビットコインのあり方も関わるこの提案の行方が今後も注目される。
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